提言

(1) 提言(過去の大会での提言など)

平成26年2月13日

防衛大臣 小野寺 五典殿

沖縄生物学会 会長 日高道雄

米軍普天間飛行場代替施設建設のための
辺野古埋め立て計画に関する意見書

 名護市辺野古沿岸域を実施区域とする米軍普天間飛行場代替施設建設事業は、辺野古沿岸および大浦湾の環境に大きな変化をもたらすと考えられます。

 大浦湾は、湾口の東側と西側に形成された溝(リーフギャップ)が湾奥まで入り込んでおり、その溝に沿って深海からの海水が流入してくるという地形条件から、沖縄県内でも特異な自然環境が形成されています。湾奥の内湾的な環境、湾内の深場に形成された泥場、そして波あたりの強い外洋に面したリーフなどの異なる環境が有機的に結びついて、生物多様性の高い環境と特異な景観を作り上げています。そこには、陸域から外洋にかけて「マングローブ・干潟」、「海草藻場」、「砂泥域」、「転石帯」、「サンゴ礁」が見られます。

 大浦湾に流れ込む大浦川と汀間川は、希少な両側回遊型魚類(オウギハゼ、希少ボウズハゼ類)の生息場所となっており、この地域の特筆すべき多様性の高い魚類相を生み出しています。

  湾奥から湾口まで続く溝には、河川から流れてきた泥が堆積し、その場所では、最近の調査によりいくつもの未記載種や新種、日本初記録種などが発見されています。特に、ゴカイ類の棲管に共生していると思われる新属新種のカニ、オオウラコユビピンノは未だに大浦湾からのみ知られており、その他にも本邦初記録のニシヒラトゲコブシ(コブシガニ科)やチゴスナモグリ(アナエビ類)が発見されています。やはり砂泥域から大型のイカリナマコの未記載種3種(1種は世界最大の全長4mを越えるクレナイオオイカリナマコ)、ウニ類のフタツアナスカシカシパンに付着する巻貝の新種フタツアナスカシカシパンヤドリニナなども発見されました。また砂礫地やガレ場からは4種の未記載種と思われる海藻(ミルモドキ属、ウミウチワ属、イソノハナ属、スジコノリ属)が見つかっています。ほんの一部の例を挙げましたが、最近の研究により、大浦湾の砂泥域は貴重な生物の宝庫であることが分かってきました。このような砂泥環境は琉球列島でもごく限られた地域にしか存在しません。

 造礁サンゴについてみますと、アオサンゴの集団(遺伝的に同じクローンであり、1個体のプラヌラ幼生由来の可能性があります)、数百年間生きてきた巨大な塊状ハマサンゴ、そして大規模なユビエダマハサンゴの群生の他に、泥場の環境にも、特異な生活史をもつサンゴたち(海底に固着せず、娘群体を無性的につくるコモチハナガササンゴ、スイショウガイの貝殻上に棲んでいて動き回るキクメイシモドキ、そして自ら扇形に割れることにより殖えるワレクサビライシなど)が見られます。
 このように、大浦湾では多様な環境が入り組んだ特殊な地形が見られますが、本埋立計画は、大浦湾口の、海水が流入してくる箇所を埋め立てる計画であり、一方で、工事期間中に汚濁防止膜を設置することで、海水の流れを遮断することになります。また、工事期間中には多くの作業船や作業者が海域陸域を往来することになり、埋立対象地域ばかりではなく、周辺のジュゴンの生息地や陸域の希少種の生息地にも影響を及ぼす可能性があります。特に、ジュゴンについては、生息個体数が少ないことは明らかであり、特段の保護策を講じなければならない状態にあります。この事業によって、ジュゴンの生息場所が広範囲に消失するばかりでなく、事業の工事中および運用後に発生する騒音や低周波音などによって事業地域周辺でのジュゴンの行動が阻害され、事業地域北側と南側に位置する餌場への移動が阻害される恐れが高まります。しかし、それらの点については配慮がなされていないのが現状です。

 また、「過去に例のないほどの大量の県外からの土砂搬入」に伴うアルゼンチンアリなどの「目につきにくい外来種」たちの影響が強く懸念されます。これらの外来種は一旦侵入・定着すると、在来の生物相(特にアリ相など)に多大な影響を及ぼし、除去作業の困難さはマングース対策以上と考えられることから、世界自然遺産への登録をめざす沖縄島北部の陸上生態系へ与える影響が大変懸念されます。

  私たちは、現在の埋立計画は大浦湾および周辺の環境及び生物多様性に大きな影響を与えると考えます。沖縄県環境評価審査会の答申(平成24年2月8日)では、「評価書で示された環境保全措置等では、事業実施区域周辺域の生活環境および自然環境の保全を図ることは、不可能と考える」と明記されています。

 沖縄生物学会は、事業実施地域のサンゴ礁生態系、陸域生態系の十分な環境保全措置がとられない限り、米軍普天間飛行場代替施設建設のための辺野古埋め立て計画の見直しを求めます。

連絡先
〒903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1番地
琉球大学理学部海洋自然科学科生物系内 沖縄生物学会事務局
電話 098-895-8577, 8547 FAX 098-895-8576
E-mail: okibio @ w3.u-ryukyu.ac.jp ※ @ を@へ直して送信してください。

コピー送付先:石原 伸晃環境大臣、仲井眞 弘多沖縄県知事、稲嶺 進名護市長

PDF File → PDF