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南西諸島における生物多様性評価プロジェクトの目的と手法
GIS手法を用いた優先保全地域の抽出と生物多様性ビジョン作り
*安村茂樹・花輪伸一(WWFジャパン)


   

WWFジャパンは南西諸島において,調査研究や普及啓発,政策提言など環境保全を目的とした諸活動に取り組んでいる。同地域をフィールドとした個人・団体への研究助成支援は30年以上で延べ168件に及び,貴重な知見の収集に貢献してきた。また,自らも保全活動の優先順位が高い地域として,石垣島白保,沖縄島北部,奄美大島を選定し,重点的な取り組みを展開してきた。
しかしながら近年では,南西諸島の自然環境を脅かす要因はカエルツボカビ症や有害化学物質汚染,地球温暖化など多様化し,これまで以上に利害関係者が連携した保全活動を展開する必要性が高まっている。こうした状況を鑑み,WWFジャパンでは,南西諸島を包括的に捉え直し,生物多様性の観点から優先的に保全すべき地域,取り組むべき課題を利害関係者と共に抽出するプロジェクトに取り組むこととした。プロジェクトは以下の3つの成果を3年以内にあげることを目指している。
1.生物多様性の観点から優先的に保全すべき地域を抽出し,
2.その地域の保全ビジョン(将来像)を利害関係者が共有し,
3.将来像を達成するための保全・管理計画を検討する。

 プロジェクトでは,その初期段階から研究者,地域の有識者,行政等の多様な利害関係者に参加を呼びかけている。優先保全地域は,GIS(地理情報システム)を活用し,関係者の知見を集約することで抽出する。関係者が優先保全地域抽出とその保全ビジョン策定の過程を共有することで,それぞれの役割を認識し,実効性の高い保全・管理計画が検討されるようになる。本発表では,プロジェクトの概要,進捗状況を紹介すると共に,多くの研究者の参加を呼びかけたい。