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西表島浦内川マングローブ域におけるキバウミニナの産卵期と殻高組成
*両角健太 (東海大・海洋),河野裕美 (東海大・沖縄地域研究センター), 上野信平 (東海大・海洋)


 マングローブ域において,大型巻貝類のキバウミニナ Terebralia palustris は,落葉を直接摂食する初期分解者であるが,その生態については未知な部分が多い。本研究では,西表島浦内川マングローブ域におけるキバウミニナの産卵期と殻高組成ならびに個体数密度について,2006年6月から2007年3月までの結果を報告する。先行調査 (福岡ら,2005) により明らかとなった本種の分布域内で5×5m 方形区を4区設置し,6月から毎月大潮と小潮に,個体数,殻高ならびに卵塊数を記録した。卵塊と産卵行動は調査を開始した6月以降11月まで毎月確認されたが,12〜3月は全く確認されなかった。卵塊は,大潮に出現する傾向にあり,その数は6月に450/100m2,7〜10月に126〜248/100m2,11月には48/100m2で推移した。出現したキバウミニナの殻高は,10.65〜138.40mmであり,その中で交尾や産卵が確認された最小個体は,各々80.15mmと91.05mmであった。また各月の殻高組成のモードは110〜120mm級にあり,そのうち80mm級以上の個体数は73,30〜92,43%と優占し,個体群の殆どが繁殖可能個体で構成されていた。個体数密度は,6月が520/100m2と最高で,7月には370/100m2に減少し,それ以降は194〜306/100m2で大きな変化はなかった。講演では本年5月までを含めた通年結果をもとに産卵期を特定し,産卵に伴う大型個体の密度変化についてさらなる検証を行う。